医療機器・ヘルスケアデバイスの説明動画ナレーション制作完全ガイド:薬機法に配慮し、患者向け・医療従事者向けで伝わり方を最適化する方法

医療機器・ヘルスケアデバイスの説明動画は「正しく伝える技術」で品質が決まる
医療機器・ヘルスケアデバイスの使用説明動画は、一般的な製品紹介動画とまったく同じ感覚では作れません。理由は明確で、視聴者の理解不足が、そのまま誤使用や不安、場合によっては安全性の問題に直結するからです。ナレーション制作では「聞き取りやすい声」以上に、法規制に配慮した言い回し、対象者に応じた専門用語の設計、誤解を避ける構文が重要になります。
私がこの種の案件で最初に確認するのは、録音前の台本ではなく、動画の対象者、承認・認証・届出の区分、そして使用目的の定義です。ここが曖昧だと、どれだけ滑舌の良いナレーションでも危険です。たとえば患者向け動画で「治療できます」「症状を改善します」と断定すると、承認範囲や広告規制との整合が問題になります。実務では「使用目的」「期待される補助的役割」「操作方法の説明」を切り分けるだけで、リスクはかなり下がります。
薬機法・医療機器法に配慮したナレーション表現の基本
まず押さえたいのは、動画ナレーションも実質的には広告・販促・説明表現の一部として見られる可能性があることです。したがって、台本段階で以下を必ず確認してください。
1つ目は、効能効果を承認範囲以上に言わないこと。
NG例は「このデバイスで痛みがなくなります」。
より安全な表現は「本機器は〇〇を目的として設計されています」「医師の指導のもとで使用してください」です。
2つ目は、最上級表現を避けること。
「最高性能」「絶対安全」「完全に防ぐ」は避けるべき典型です。医療分野では、たとえ性能試験データがあっても、ナレーションで断定的に言い切ると誤認を招きます。代わりに「従来比」「社内試験条件下」「測定環境により異なります」といった限定条件を明示します。
3つ目は、禁忌・注意事項を軽く扱わないこと。
使用説明動画では、メリットだけでなく「使用前に添付文書をご確認ください」「異常を感じた場合は使用を中止し、医療従事者に相談してください」といった安全文言を、BGMに埋もれない音量で入れる必要があります。ラウドネスは配信先にもよりますが、説明動画なら-16 LUFS前後を基準にしつつ、注意喚起部分は声の明瞭度を優先します。
患者向けと医療従事者向けでは、専門用語の密度を変える
同じ機器でも、患者向けと医療従事者向けではナレーション設計がまったく異なります。ここを混同すると、伝わらないだけでなく、信頼も落ちます。
患者向けでは、専門用語は1センテンス1用語までが安全です。たとえば「経皮的酸素飽和度」より「血液中の酸素の状態を示す値」と言い換える。どうしても専門用語を使うなら、先に平易語、後に正式名称の順にします。読みのテンポも重要で、通常の企業VPより10〜15%ゆっくり、1文あたり35〜45文字程度に収めると理解度が上がります。
一方、医療従事者向けでは、むやみに噛み砕きすぎると逆に不自然です。「装着してください」ではなく「装着後、アラーム閾値を設定します」「単回使用です」「滅菌済みパッケージを確認してください」といった、現場語彙を正確に使う方が信頼されます。ただし、専門性が高いほど、略語の初出定義は必須です。たとえば「SpO2」「ECG」「I/F」などは、初回だけでも補足すると親切です。
依頼時に必ず渡したい3点セット
発注側がナレーターや音声ディレクターに渡すべき資料は、最低でも3つです。
1. 承認済み表現リスト
薬事・法務・品質保証を通過した文言集です。これがあるだけで、収録後の差し戻しが激減します。
2. 想定視聴者の定義書
患者本人向けなのか、家族向けなのか、看護師向けなのか、臨床工学技士向けなのか。視聴者像が1段階違うだけで、語彙もスピードも変わります。
3. NGワード一覧
「治る」「安全です」「副作用がありません」など、社内で使えない表現を先に共有します。Google DocsやNotionで版管理し、収録前に最終版を固定するのが実務的です。
可能なら、参考音声も付けてください。落ち着いた説明型、安心感重視、教育研修向けなど、方向性が15秒あるだけで精度が上がります。収録は48kHz / 24bit、マイクはTLM 103、MKH 416、AT4040クラスが扱いやすく、医療系では過度な演出より子音の明瞭さと無音部の清潔感が重要です。
医療系ナレーションで失敗しない実務フロー
おすすめは、
台本確認 → 法務・薬事レビュー → 仮読み → 画合わせ確認 → 本収録 → テロップ整合チェック
の6工程です。
特に有効なのが仮読みです。AI音声でも人の仮ナレでもよいので、先に映像へ当てると、難解な用語の連続や注意喚起の聞き逃しが見えます。完成直前で修正するとコストが大きいため、ここに30分使う価値は高いです。
医療機器の説明動画ナレーションは、上手い声を入れれば完成する仕事ではありません。規制、理解度、安全性、信頼感を同時に成立させる設計業務です。だからこそ、依頼時点で情報を整理し、対象者に合わせて言葉を選ぶことが、最終的な動画品質を決定します。伝える技術は、安心を設計する技術でもあります。

小林 将大 Masahiro Kobayashi
Professional Narrator
企業VP、CM、ドキュメンタリーなど年間300本以上のナレーションを担当。
高品質な宅録環境を完備し、スピーディかつ最高水準の音声データを提供します。
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