CM尺別制作ガイド:15秒・30秒・60秒のナレーション構成テンプレ
CMナレーションは「尺」で設計が変わる
CMナレーションは、同じ商品やサービスを扱っていても、15秒・30秒・60秒で設計思想が大きく変わります。短い尺ほど情報を削ぎ落とし、長い尺ほど情報を足せばよい、という単純な話ではありません。重要なのは、その尺で視聴者に何を残すかを先に決めることです。
映像制作の現場では、編集段階で「言いたいことが多すぎて入らない」「映像は良いのにナレーションが急ぎ足になる」といった問題が起こりがちです。こうしたズレの多くは、収録前に尺ごとの構成テンプレを持っていないことが原因です。
ナレーション設計では、まず次の3点を整理すると進めやすくなります。
- 目的:認知獲得か、理解促進か、比較検討か
- 主役:映像か、ナレーションか、テロップか
- 着地点:商品名想起、ブランド印象、行動喚起のどれを優先するか
尺は単なる時間ではなく、伝達戦略そのものです。以下では、15秒・30秒・60秒それぞれに適した構成テンプレを紹介します。
15秒CM:一言で刺す設計
15秒CMは、説明よりも印象の定着に向く尺です。視聴者が受け取れる情報量は限られるため、ひとつのメッセージに絞るのが基本です。詰め込みすぎると、結局何も残りません。
15秒の基本構成
おすすめは、以下の3ブロックです。
- 0〜4秒:注意喚起・課題提示
- 5〜10秒:商品名・ベネフィット提示
- 11〜15秒:記憶に残す締め・CTA
この尺では、ナレーションが全情報を背負う必要はありません。むしろ、映像・テロップ・効果音と役割分担し、ナレーションは芯の一言だけを届けると強くなります。
15秒テンプレ
#### パターンA:課題解決型
- 導入:「その○○、まだ我慢していませんか?」
- 提示:「○○なら、△△を手軽に改善。」
- 締め:「毎日に、○○。今すぐチェック。」
#### パターンB:印象訴求型
- 導入:「新しい朝は、声まで軽い。」
- 提示:「○○、誕生。」
- 締め:「あなたの日常を、ひとつ先へ。」
制作時の注意点
- 1センテンスを短くする
- 固有名詞は1〜2個までに絞る
- 最後のブランド名は聞き取りやすく間を取る
- BGMが強い場合は、中低域の声質を選ぶ
15秒は「説明の省略」が正解になる尺です。情報を減らす勇気が、完成度を上げます。
30秒CM:理解と印象のバランスを取る
30秒は、最も汎用性の高い尺です。商品特徴をある程度説明しながら、印象形成も狙えます。テレビCM、Web動画広告、タクシーサイネージなどでも使いやすく、実務上もっともテンプレ化しやすい長さです。
30秒の基本構成
おすすめは、4ブロック構成です。
- 0〜5秒:フック
- 6〜15秒:課題と解決策
- 16〜24秒:具体的な強み・信頼要素
- 25〜30秒:ブランド名・CTA
15秒より一歩踏み込んで、「なぜそれが良いのか」を1つだけ補足できます。ただし、特徴を3つも4つも並べると散漫になります。30秒で伝える価値は、主軸1つ+補助1つが目安です。
30秒テンプレ
#### パターンA:商品訴求型
- フック:「忙しい毎日に、もっとスマートな選択を。」
- 課題提示:「面倒な○○や、時間のかかる△△。」
- 解決策:「○○なら、これひとつで簡単。」
- 強み:「使いやすさと高品質を両立。」
- 締め:「○○。詳しくはWebへ。」
#### パターンB:ブランド信頼型
- フック:「選ばれ続けるのには、理由があります。」
- 提示:「○○は、□□で培った技術を活かし、」
- 強み:「毎日の△△を、より快適に。」
- 締め:「信頼の○○。」
制作時の注意点
- 中盤で情報密度を上げ、終盤で整理する
- テロップと同じ内容を全文読みしない
- 実績・数字を入れるなら1点に絞る
- CTAは映像の最終カットと同期させる
30秒は、ナレーションの組み立て次第で「売り込み感」が強くも弱くもなります。映像が感情寄りなら、ナレーションは説明を担う。映像が説明寄りなら、ナレーションは温度感を担う。このバランス感覚が重要です。
60秒CM:ストーリーで納得させる
60秒になると、商品説明だけでなく、ブランドの思想や利用シーン、導入前後の変化まで描けます。視聴者に「わかった」だけでなく「なるほど、だから選びたい」と思わせる構成が可能です。
60秒の基本構成
おすすめは5ブロックです。
- 0〜8秒:共感導入
- 9〜20秒:課題の具体化
- 21〜38秒:解決策・使用シーン
- 39〜50秒:信頼要素・差別化
- 51〜60秒:まとめ・CTA
60秒では、ナレーションに抑揚と展開が必要です。全編同じテンションで読むと長く感じられます。前半は引き込み、中盤は理解、後半は確信という流れを意識すると、聞き疲れしにくくなります。
60秒テンプレ
#### パターンA:ストーリー型
- 導入:「毎日を頑張るほど、○○の悩みは増えていく。」
- 課題:「時間がない。手間はかけられない。でも、妥協もしたくない。」
- 解決策:「そんな声から生まれたのが、○○。」
- 使用シーン:「朝も、外出先でも、帰宅後も。自然に使えて、しっかり続く。」
- 信頼要素:「□□技術と△△設計で、使いやすさにも配慮。」
- 締め:「あなたの毎日に寄り添う、○○。」
#### パターンB:ドキュメント型
- 導入:「現場の声に、答えはありました。」
- 展開:「多くの利用者が感じていた○○の不便。」
- 解決策:「私たちはそこに向き合い、△△を実現。」
- 実証:「導入企業・利用者コメント・数値実績へ接続」
- 締め:「選ばれる理由が、ここにあります。」
制作時の注意点
- シーン転換ごとに語尾や間を調整する
- 60秒でも1文を長くしすぎない
- 感情の山を1〜2か所つくる
- 最後の10秒は情報追加より整理を優先する
60秒は自由度が高い分、構成が甘いと冗長になります。伝えられることが増えるほど、削る判断が重要になります。
尺別で共通する実務ポイント
どの尺でも、収録前に確認したいポイントがあります。
原稿設計の基本
- 読み尺は日本語で1秒あたり4〜5文字が目安
- 商品名・企業名はアクセント辞書を事前確認
- 映像の見せ場では、あえて無音や短いフレーズを使う
- CTAは情報ではなく行動のきっかけとして設計する
ディレクションの基本
- 速さよりも「意味の伝わる間」を優先する
- 仮編集に合わせて、語尾の長さを調整する
- 同じ原稿でも、温度違いで2〜3パターン録る
- Web向けはやや自然体、TVCMはやや記名性重視で考える
まとめ:テンプレがあると演出の自由度が上がる
ナレーション構成テンプレは、表現を画一化するためのものではありません。むしろ、土台を先に決めることで、演出の工夫に集中できるようになります。
- 15秒は「一言で残す」
- 30秒は「理解と印象を両立する」
- 60秒は「ストーリーで納得させる」
この基本を押さえるだけで、原稿制作、収録、編集の精度は大きく上がります。CM制作では、良い声を選ぶこと以上に、その尺で何を言わないかを決めることが重要です。まずは尺ごとのテンプレをベースに、商品特性と媒体特性に合わせて最適化してみてください。